近江聖人・中江藤樹。日本陽明学の祖。近江商人・三方よしの利他の心は藤樹先生の教え。

中江藤樹。
近江聖人と称され、日本陽明学の創始者です。

陽明学研究家の林田明大先生の勉強会に参加したときに
林田先生が
ドイツ人の生き方のお手本はゲーテ。
日本人は生き方のお手本として「中江藤樹」を学ぶと良い。
と言っておられました。

中江藤樹先生のことは
戦前の国語の教科書や修身の教科書に掲載されていたようです。

私は中江藤樹という人物のことはあまり知りませんでした。
大学生のときに読んだ内村鑑三の代表的日本人に書かれていたことは覚えていましたが、恥ずかしながらほとんど覚えていませんでした。

もともと中江藤樹先生は農家の生まれです。
1608年近江国・高島郡小川村の農家・中江吉次の長男として生まれました。
9歳の時に祖父・中江吉長の養子となります。
中江吉長は米子藩・加藤家の藩士であったため、
親と離れて、米子に行きます。

さらに1617年加藤家が愛媛の大洲に転封になったため、
大洲に行きます。

1622年祖父・吉長が亡くなったため15歳で家督を継ぎます。

1634年27歳の時になんと脱藩して近江の小川村に戻ります。

その理由が一人で暮らしている母親への思いです。

病気がちだった母が心配だからと
脱藩し、愛媛から近江に帰るのです。

もともと厳しいお母さんです。
藤樹が9歳のとき、学校を休んで近江に帰ると
男が一度決断して、家を出たのだから
やすやすと家に帰ってくるのはよくない。
私のことは心配しないで戻りなさい。と言った
お母さんです。

中江藤樹先生は孝行を大切にしました。
孝行とは父母を大切にし、先祖を尊び、大自然を敬うこと。
そのために毎日の生活の中で
心を磨き、家族やまわりの周りの人に親しみ、仲良くし、
行いを正しくし、健康に気を配ること。

五事を正す。
「貌・言・視・聴・思」(ぼう・げん・し・ちょう・し)

貌  なごやかな顔をし
言  思いやりのある言葉で話しかけ
視  澄んだ目でものごとを見つめ
聴  耳を傾けて人の話を聴き
思  まごころをこめて相手ことを思いやる。

普段の生活の中で周りの人たちと交わる中で
五事を正し、良知を磨く。
うーん。素晴らしい教えですね。

中江藤樹先生は
27歳で近江の小川村に戻ったとき
お酒の販売をはじめます。
商いで生計を立て、それ以外の時間に励みます。
塾を開き、勉強も教えます。
藤樹先生は酒を買いに来る村人に「あなたはこれくらい飲むと良い」と
一人一人に合わせて分量を計りお酒を販売したそうです。

武士としては
仕事を放棄して、実家に戻るとはありえないことです。
でも自らが選んだ道。
母親への孝行。

自らは学問を深め、陽明学の教えを、私塾を開き
塾生に教えます。

道の駅・藤樹の里あどがわ・藤樹先生孝養像

中江藤樹先生の言葉
「父母の恩徳は天よりも高く、海よりも深し」
お父さんお母さんの子供に対する愛はすごいものだ。

「善をなすは耕うんのごとし」
良い行いをするのは田畑を耕すようなもの、
すぐには結果はでないが、やがて実りとなる。

「それ人心の病は満より大なるはなし」
高慢な心を持っていれば、大切なものを失ってしまう。

藤樹先生のお話でこんな話があります。
近江に住んでいる馬に人や荷物をのせて運ぶ仕事をしている男の人が
飛脚を京都まで乗せました。
そのあと鞍を外すとなんと財布が出てきました。
先ほど乗せた飛脚のものだと気づきます。
京都まで30キロの道を徒歩で歩いて
飛脚の泊っている宿まで届けます。

ちょうどその飛脚はお金がないことに気づき大慌てをしているところでした。

これは藩の公金で失くしたら私は死罪になるところだった。
本当にありがとう。

飛脚はお礼を渡そうとしますが届けた男の人は受け取りません。
押し問答の末、少しのお金を受け取ります。
その男の人はそのお金で酒を買ってきて
宿の主人と話をしながら酒を楽しそうに飲んで
酒がなくなったタイミングで帰ろうとします。

飛脚は男のできた行動に
ひとかどの人物に違いないと思い、
あなた様はどんな人ですか?と聞くと
私はただの運送屋です。
近所に中江藤樹という先生が住んでいて
藤樹先生の話を時々聞きに行きます。

陰徳のあるものには必ず陽報がある。
人知れず、良いことを行うものには必ず良いことがおこる。
とかとても良い話をしてくれます。

私は藤樹先生の教えるとおりにしただけです。

藤樹先生はいろんな人に
「人としての道」を説いて、
良い影響を与えていたのですね。

中江藤樹先生は「近江聖人」と言われます。

中江藤樹先生の生き方はぜひ、お手本にしたいです。

大人も子供もみんな学びたい教えです。

世の中を生きていると様々なことがあります。
つらいこと、くやしいこと
うれしいこと、楽しいこと
いろんなことがあります。

その中で
誠を尽くして生きていきたい
そんな思いをいだかせてくれる
藤樹先生の教えです。


評伝・中江藤樹


中江藤樹『翁問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ15)

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