陽明学。人間が生まれつきもっている道徳的な判断能力である「良知」。この良知を発揮するためには「人としてお手本になる生き方」をすること。

林田明大先生の著書・真説「陽明学」入門

昨日、2019年11月9日
真説「陽明学」入門 の著者で
陽明学研究家の林田明大先生を招いて行われた勉強会に行きました。

陽明学は江戸初期に近江聖人と称された「中江藤樹」によって
日本に根付き、その弟子である「熊沢蕃山」、「淵岡山」によって
さらに発展し、幕末。さらに明治末期から昭和初期にはブームとなり
戦前までの日本人に大きく根付いていた学問です。

陽明学では「良知」を発揮できるような自分を目指します。
「良知」とは人間が生まれつき持っている道徳的な判断の能力です。
私たちは生まれながらに素晴らしい判断能力が備わっています。

そういう意味では陽明学は性善説に基づいた学問です。

「良知」を信じる。
「良知」を発揮するためには
人としてお手本になる生き方をすることです。
日常生活の中でそれは実現できます。

そのために有効なことは「内観」をすること。
自分の心の中を見つめること。
自分が何を思っているか感じること。
僕たちが思ったことは自分自身が知らないうちに忘れてしまいます。
内観すれば自分が思ったことに気づくことができます。
僕たちは自分が気づかぬうちに「とんでもないこと」を思っていたりします。
そのことに気づくことが大切なのです。

心の内側を見ること。
これが内観です。
いつでもできます。
自分の「思い」「思考」を感じ、気づくこと。

自分に対して贔屓目に見ている自分がいます。
人に対して厳しい目で見ている自分がいます。
そのことに気づくこと。

また
思いが強ければ、強すぎれば、それは叶わない。
という話がありました。
「何かを実現したい」「ほしい」と思っても
その思いが強すぎず自然であることが大切です。
良知に従い、自然でお手本になる生き方をすることが大切です。

ありがとうの心で接し、感謝すること。
決して怒らないこと。
良知に従って生きること。ただ行うこと。

毎日、人としてお手本となる生き方をすること。
日常生活の中で、人に親切にし、感謝をし、生きていくこと。
そうしていくことで「良知」が発揮できます。

感謝の心で、自分の心を内観しながら
生きていこう。

お手本になる生き方をしていこうと思いました。

林田先生は
人としてお手本になる生き方の一例として
「大和の清九郎」のお話を紹介されました。

清九郎は「軽度の知的障害」でした。
文字を読むことや書くことができませんでした。
働き者に育った清九郎は奉公に出ていましたが、
文字が読めない清九郎は、出世の見込みがなく、人生に行き詰まりを感じ、
奉公をやめ、実家に戻り、放蕩無頼の生活を送るようになります。

なんと、そんな清九郎が結婚をします。
ため息交じりに清九郎の生活を嘆くお母さんの話を聞いたある娘さんが
「ぜひ、嫁になりたい」と志願して自ら嫁いでくれたのです。
それでも清九郎の放蕩生活はおさまりません。
清九郎と嫁さんとの間に
一人の女の子が誕生しました。
それでも清九郎は変わらず遊びまわっています。
やがて嫁さんは疲れ果て、病気になり、死んでしまいます。
嫁さんは死ぬときに清九郎にたいして
「ご縁があって嫁に来ましたが、年老いたお母さんと乳飲み子を残して死んでいきます。この世での縁は浅かったですが、一足先にお浄土で待っています」と
いう言葉を残して死んでしまいました。
この言葉を知って、清九郎は初めて感じ入り、
「お浄土に行って嫁さんに謝りたい!」と改心します。

清九郎は良く働くようになり、母親にも孝行を尽くすようになります。
律儀で正直者だと周りの人からの信用も受けるようになります。

清九郎は街に出て「薪」を売ることもありました。
値切ろうとする買い手に一言の文句も言わず、求められたとおりの値段で売ります。
しかし、清九郎の売る薪はごまかしがなく、クオリティーが高いと評判になり、清九郎の売る薪を値切る人はいなくなったそうです。

清九郎の一人娘も気立ての良い娘に成長します。
そんな娘に
清九郎は
「蝮(まむし)の久六」と呼ばれている
地元で評判の嫌われもので恐れられている
昔の清九郎のような放蕩無頼の男と結婚させます。
昔の自分のような「蝮の久六」という男を立ち直らせたいと思ったのです。

なかなか久六の放蕩生活は変わりませんでしたが
やがて清九郎と娘と生活を共にするうちに
生活を改め、悔い改めて、まじめな良い人間にかわったそうです。

言葉では人はなかなか変わらない、
日々の生活の中で、一緒に生活する人の行動に影響されて
人は変わっていく。

今でも奈良県の高取町には「大和清九郎会館」という建物まであり
清九郎は地元の人々の尊敬を受けています。

浄土真宗からは信心が厚く、言行が素晴らしい人間として
「妙好人」(悟りの境地にある一般人)として認められ、
今も清九郎は語り継がれている存在です。

僕は奈良で中学・高校時代は奈良に住んでいて、
今でも実家は奈良にありますが
「大和の清九郎」の話は恥ずかしながら知りませんでした。

そんな話を聞いて
良知を発揮できる自分であるために
日々感謝をし、お手本になる生き方を目指そうと思いました。


とても優しい雰囲気の勉強会でした。

主催の佐々木あきらさん。

たくさんの気づきを与えてくださった
林田明大先生。
誠にありがとうございます。

自分の目指す生き方が見えました。
あとは毎日の生活の中で「誠」を尽くして生きていくことですね。

奈良県高取町にある大和の清九郎の銅像


新装版・真説「陽明学」入門 (ワニプラス)


12月7日(土) 09:20〜11:50
12月7日(土)14:10 ~ 15:40
名古屋で林田明大先生を招いた最後の勉強会があります。
ぜひ興味のある方はお越しください。

https://www.kokuchpro.com/event/b9ae099fc0cbc58ec233a97244f40ed8/813292/

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