ダントツに強かったセブンイレブンに何が起こったのか?それは静かに始まり、ついに爆発した。でもその原因は成功と裏腹だ。

セブンイレブンのモバイル決済サービス
「7pay」の不正利用騒動。
7月4日の時点で、被害者900人、被害総額5500万円という被害額。
金額よりも今までコンビニ業界の中で、いや、日本の小売業の中でダントツに強かったセブンイレブンに何が起こったのだろう?

セブンイレブンの劣化は静かに始まり、徐々に表面化し、ついに爆発した。
僕はそんな印象を受けます。
セブンイレブンは僕の家から歩いて3分の場所にあって、
とても便利な存在。

昔のセブンイレブンはとても良かった。
おでん100円セールも良かった。
従業員の方の接客も良かった。
でも今は店を回すのに精一杯になってきている。
魅力的な商品は少なくなり
お値打ち価格の商品はどんどん少なくなり
店舗に魅力が失われつつあるのを
肌感覚で感じていました。

それは3年前にさかのぼる。

2016年4月
セブンイレブンを作り上げ、ダントツのレベルに引き上げ
経営してきた鈴木敏文会長が辞任した。

なぜか?
追放されたのだ。
鈴木会長が退任を言い渡したセブンイレブン社長の井阪氏に
逆に追放された形になった。

鈴木会長の提出した井阪氏の社長退任人事案は取締役会で否決され、
鈴木会長は退任する。

ここが、セブンイレブン劣化の始まりだと僕は思う。
当時、最高益を続けてきたセブンイレブン。
業績は問題なし。
井阪社長にしてもだからこそ納得がいかない。
なぜ辞めさせられるのか?

鈴木氏は言う。
井阪氏は物足りない。最高益は続けているが、彼が新しい提案をしたり、
新しいものを生み出したことはない。私が言ったことをやってきただけ。
もう7年もやったのだからいいだろう。
井阪氏に退任を言い渡す鈴木氏。

井阪氏は納得しない。
鈴木氏の言葉によれば
井阪氏はこう言ったという。
「私はまだ若いし、マンションの支払いもあります。セブンイレブン一筋にやってきました」
「業績だって最高益を続けている、やめさせられる理由はない」
鈴木氏に食ってかかったそうだ。

まさにサラリーマン的発想だ。
自分の能力とマンションの支払いは関係ない。
いうならば自分の力不足を恥じるべきで、マンションの支払いがあるから
セブンイレブン一筋だから
そんなことは関係ないと思う。
会社を経営する能力に関係のないことだ。

その井阪氏が今、
セブンイレブンの親会社
セブンアイホールディングスの社長になっている。

セブンイレブンを今まで育ててあげてきた鈴木氏に物足りないといわれた井阪氏。
その井阪氏が今、セブンアイホールディングスの最高権力者なのだ。
井阪氏はイトーヨーカードーの創業家、伊藤家を味方につけ
鈴木氏の追放を成功させたのだ。
社内政治には勝ったが、会社を経営する能力があったか?
といわれれば、「なかった」と言わざる得ない。
自分に能力がなくても周りに優秀な人材はセブンイレブン内部にいる。
鈴木氏と違った経営スタイルで
会社を成功に導くことはできる。
方法は一つではない。

僕自身もセブンイレブンにどんどん魅力を感じなくなった。
セールがどんどん「せこく」なってきたと感じた。

おでん100円セールも、おにぎり100円セールもなくなった。
鈴木氏も安売りは否定していたが、お得なセールはやっていた。
でもやらなくなっていった。

セブンイレブンにお値打ちな商品はなくなり、
高価格の商品がどんどん増えていった。
欲しくなるような商品が前はもっと多かった。
そういうものが少なくなってきた。
買いたいものがなくなってきた。

ローソンのほうが今は商品のラインナップのバライティーが豊かと感じる。
お値打ちなものも置いてるし、高いものも置いている。
セブンイレブンには今はお値打ちを感じるもの
欲しいと感じるものは以前よりは少ない。

経営トップが「サラリーマン的人間に変わった」
これがセブンイレブンの今回の騒動の元凶だ。
そんな人間が増えたら組織は弱くなる。

キャッシュレス決済もローソンがまず先行し
ファミリーマートがそれに続いた。
セブンイレブンはやっとコード払いが使えるようになり
今回、キャッシュレス決済の大手三社に声をかけ、
7月11日からキャッシュレス決済の20%還元を始める。
だからその前に
7月1日から自前のキャッシュレス決済
セブンペイを始めたかったのだ。
焦り、拙速に作った。

すべてに出遅れているセブンイレブン。
時代を読む。
未来を見てきて、先頭を突っ走ってきたセブンイレブンとは真逆の姿だ。
それは今までセブンイレブンを作り上げてきた鈴木氏の罪だ。
負の部分だ。
自ら天才であるがゆえに、自分自身でどんどん意見を出し、案をだし、周りを指導し、引っ張ってきた。
後継者を育ててこなかった。
むしろ自分より優秀な人材が出てきたときは潰したふしさえある。

でも結局は自らに従順に仕えてきたと思い込んでいた、
それしか能のない井阪氏に追放され、
その井阪氏は権力意識が強い、社内政治が強い
経営能力のない人物だった。

そう考えると、今期のセブンペイ騒動の真の原因は
セブンイレブンをダントツに引っ張ってきた鈴木敏文氏にあると思う。

ただこの鈴木氏もサラリーマンである。
でも鈴木氏は周囲の反対を押し切り、
当時アメリカにあったコンビニをもってきた立役者であった。
1970年代、スーパー業界の17位に過ぎなかったイトーヨーカドー。
中途入社組で30代であった鈴木敏文氏。
鈴木氏は新規事業をプランをする部署の責任者だった。

当時、レストランのデニーズを日本に持ってこようという交渉のために
頻繁にアメリカを訪れていた鈴木氏の目にたまたま入ったのが
コンビニだったのだ。
「これは日本ではやる!必ず成功する!」と思った鈴木氏。

何度も何度もコンビニをやりたいと当時のイトーヨーカドー社長の創業家出身の伊藤氏にかけあう。
何回も跳ね返される。
ついに伊藤社長が根負けする形で、はじまったセブンイレブン。
社長が乗り気でなかったので、はじめは
優秀な人材も資金も投入されなかった。

そんな中、まず全国の商店街の酒屋さんに目を付け、
日本の小売業の未来を解き、
フランチャイズなんて日本になかった時代に
全国の優秀な酒屋の店主を口説き落とし
優れた人材を巻き込みながら
フランチャイズ制度を確立した鈴木氏。

鈴木氏はデーターより
まず未来はこうなるというシナリオを考えて
実行に移す人。
天才肌の人間でした。
それが次々と当たり、セブンイレブンは大きく成長しました。

未来は鈴木氏の頭の中にあり、
それをどんどん実行していくので、他社はどうしても後手に回らざる得ませんでした。
鈴木氏は本物の天才で、多くを語るのを良しとしなかったため、
周りの部下ですら彼の頭の中を理解するのは大変だったそうです。

部下にもとても厳しく、
セブンイレブンの上層部は鈴木氏の存在により
激しいプレッシャーの中、仕事をする必要がありました。
天才の頭脳を理解し、実行する。
それがセブンイレブン躍進の原動力です。

その鈴木氏がいなくなった3年後の今。

キャッシュレス決済の分野でも
セブンイレブンは後手に回るようになり
ついに焦りを生み、今回のセブンペイ騒動につながってしまったと思います。

過去のデーターは重視しない。
お客さんの立場で考える。
売れたデーターを背景に未来を考え、発注を考える。
完売は喜ぶことでなく、機会ロスと考える。
常に顧客の立場を考えてきた、鈴木氏。
彼がいれば今回の騒動は起きなかった。

でも鈴木氏は残念ながら後継者を育ててこなかった。
むしろ、優秀と思われる部下は自分を脅かす存在としてつぶしてきた。
そうして従順な部下だと思っていた人物に追放された。

まさに自業自得。

今のセブンイレブンは常に未来を見据え、
過去を否定し
破壊と創造を繰り返した来た鈴木氏。
その能力は素晴らしい。
でも今のセブンイレブンの停滞と没落は
彼が後継者を育ててこなかったことにある。

いかに、経営を引き継ぐか?

人材を育てるか?

今回のセブンペイ騒動でそんなことを考えました。


ただ僕は天才、鈴木敏文の考えにはとても興味があります。
今度、鈴木敏文氏の本を読んでみよう。
常に未来を読んで、セブンイレブンをダントツに成功に導いた天才の本を。


わがセブン秘録


セブン‐イレブンの「16歳からの経営学」―鈴木敏文が教える「ほんとう」の仕事

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